カンボジア・児童保護に関するワークショップを終えて

お知らせ

2025年3月13日・14日、カンボジア、プノンペン市内のホテルカンボジアーナで、カンボジア初の世界ソーシャルワークデーを記念した児童保護に関するワークショップが開催された。このワークショップはトヨタ財団の海外援助プログラムの1つで「カンボジア・ベトナムの子ども家庭福祉ソーシャルワーカーの人材育成プログラムの開発」というプロジェクトの一部である。カンボジア専門ソーシャルワーカー協会(APSWC)と日本の国際ソーシャルワーク協会(AISW)の共催で開催され、ユニセフ、ファーストステップカンボジア、カリタス、HAGAR、COLT、M’lup Krousarなどが後援団体となり、当日の運営に協力した。また、政府の社会福祉・退役軍人・青少年更生省(MoSVY)の児童保護部長が講師を務め、熱心に議論に加わった。ワークショップには、後援団体のソーシャルワーカーや学生約50人が2日間活発に参画した。

このワークショップは、児童保護の現場で働くソーシャルワーカーが子どもの権利の尊重など児童保護の原則をどのように実践に生かすかを、アジアの他の国々からも学び合い、児童保護のケースマネージメントの手法を身に着け、改善する事柄を政府に提言することを目的とし、ソーシャルワーカーの実践力を高めるため、聞きっぱなしの講義だけでなく、参加者のディスカッションの時間を十分に取ること、講義は外国の実践を語れる講師を招聘すること、地域で児童保護の実践経験を持つソーシャルワーカーにパネルディスカッションに参加してもらうこと、などを基本方針として開催された。

2日間のワークショップであったが、第1の成果は児童保護に取り組むソーシャルワーカーのネットワークが確立したことである。カンボジアのソーシャルワーカーは、資格のあるなしにかかわらず、現地や国際NGOのワーカーとして働くことが多いが、国際的ネットワークはあるものの、地域でのネットワークは未だ十分に確立されていない印象である。今回のワークショップを通して、APSWCを核にソーシャルワーカーの連携が進むことを期待する。第2の成果は、児童保護に関して、法整備や実践方法が進化することである。多くのソーシャルワーカーがシステム上のアセスメントシートの統一を願っており、こうした動きが具体的に実現されることを期待したい。第3に、APSWCがカンボジア初の世界ソーシャルワークデーイベントを開催したことで、カンボジアのソーシャルワーカーがアジアの他の国々と、そして世界のソーシャルワーカーと繋がったということである。

課題としては、カンボジアのソーシャルワーカーの社会的地位が低いこと、優秀な人材を継続的に確保するのが難しいこと、などが挙げられている。これに対しては、現在、ソーシャルワーク人材の法整備が進められており、近く「登録ソーシャルワーカー」が誕生する予定である。

ワークショップを終え、カンボジアのソーシャルワーカーの大変人懐こく親切な人柄に触れ、元気をもらえた。質疑応答も活発に行われ、NGOで働くソーシャルワーカーの実践能力はかなり高度であると認識した。おそらく、NGOの外国からの研修・スーパービジョンなどで獲得したソーシャルワーク実践技術であると思うが、今後は、カンボジア国内で資格あるソーシャルワーカーとして認知され、アジアのソーシャルワーカーと活発に交流してほしいと思う。                     (AISW副会長 平田 美智子)

ワークショップとは別に、3月12日午後、国際講師3人が、NGOのHAGARの運営する女性と子どものための一時保護施設「愛の家」を見学した。このホームは人身取引など様々な理由で家を失った女性や子どもを家族同様に世話し、自立支援までサポートする施設である。HAGARは1994年にスイス人によって設立された組織で、資金はイギリス、アメリカ合衆国、オーストラリアから支援を得ている。子どもはここで1~2週間保護され、HAGARでカウンセリングを受けたのち、元の家族のもとに戻るか、親族の保護、さらに里親家庭に保護されるかである。里親制度は1995年より開始され、現在33家庭が登録している。(里親手当は少額だが出る)HAGARは現在予防に力を入れており、地域での意識向上、子どもの意識向上のためのグループワークを行っている。

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