講演会「ベトナムとシンガポールからみたアジアの子どもと家族の福祉の未来」を終えて

2024年5月18日、国際ソーシャルワーク協会の2024年度春の講演会が、東洋大学赤羽台キャンパスにて開催されました。今回は、ハノイ国家大学客員教授である桂良太郎氏を講師にお迎えして、「ベトナムとシンガポールからみたアジアの子どもと家族の福祉の未来」についてご講演いただきました。

対面による開催でしたが、日本の各地からの新たな参加者をお迎えし、講師との活発な意見交換の場を持つことができました。

司会およびコーディネーターの任にあたった、大島了氏(理事)、南野奈津子氏(理事)の感想を掲載いたします。

ー国際ソーシャルワークへのポジティブな視点に触発されましたー

国際ソーシャルワーク協会が取り組むプロジェクトに関連して、「ベトナムとシンガポールからみたアジアの子どもと家族の福祉の未来」と題した桂先生の講演を企画し、参加させていただきました。

 冒頭、桂先生からは、参集された皆さんの知りたいことに応える機会としたいといただき、現地で長年ソーシャルワーク・社会福祉教育に携わられてきた貴重なお話とともに、また質疑応答・意見交換の時間をたくさんいただくこともできました。

 私自身、国際ソーシャルワーク協会が現在の法人化をする前の取り組みの中で、JICAと取り組んできた人身売買の問題の取り組み状況をハノイで聴講する機会に恵まれました。その前後でASEANの取り組みとして、人身取引問題への対応やソーシャルワークの現場での仕事に危険を伴う場面もあることを知る機会ともなり、直接にできることがない自らの力のなさを感じることにもなりました。今回、この機会をいただき、桂先生のお話の中にあった悲観的にならないこと、夢を持つことが大切であることを胸にこれからも取り組んでいきたいと思います。     大島了(協会理事)

ーお互いの文化への尊敬が多国間での協働へのかぎー

桂先生からは、冒頭でベトナムの社会状況がわかる動画を織り交ぜつつ、ベトナム社会の現状の一端をご紹介いただきました。ベトナムの家族文化の特徴として、ベトナムでは夫婦関係が平等であり、かつ家族の人間関係が密であるとのことでした。ハノイとホーチミン市に住む高齢者の調査によると、6.9%のハノイの高齢者と4.8%のホーチミンの高齢者が独居ですが、一方で、三世代で住む家族はそれぞれ57.4%、51%とのことです。特に、都会の高齢者より農村の高齢者の方が息子と同居志向性はきわめて高いことにも言及されており、都市化が急激に進む一方で、家族の絆の強さは今も残っていることがわかりました。

質疑応答では、ベトナムに限らずアジア諸国の人々がもつ、国をつくってきた祖先や先人への畏敬の思い、特に心の部分での人間的な豊かさについて強調されていたことが印象的でした。また、ソーシャルワーカーが重視すべきカルチャルコンピテンス、プロセスの重視への指摘は、本プロジェクトの核となる、こども家庭ソーシャルワークに関する協働での、ベトナム文化へのリスペクトの重要性についての示唆を得るものでした。

外国人労働者の人権保障と国際化社会における日本の責任についても言及されましたが、アジア諸国が日本に対し、多文化を尊重する姿勢をもつ社会であるという認識をもってもらうことが、ソーシャルワーカーが国境を越えて協働関係を形成する際の基盤となることでしょう。お互いの文化への尊敬が多国間での協働、そしてこども家庭ソーシャルワークでの重要であることを再認識した講演会でした。               南野奈津子(協会理事)  


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